エレアス Cruise to the Edge 2017 滞在記 ~その5~

クルーズ4日目

なんだかスケジュールが二転三転して滅茶苦茶。前日配られた変更表によると我々の演奏も16:15から18:00に変更、パトリック・モラーツもシアターからCentrumに変更の模様(モラーツさん3年ぶりにお会いして確認すると、本人も何故だか分からないとのことで困惑されていました)。そういえば、スコット・ヘンダーソンも結局来ていなかった模様...。

この日はエレアス2度目の出演なので、朝から個人練習。部屋のベランダに出てイヤホンを装着し、どこまでも続く大海原を眺めながらベースの練習をしました。自分がスケールの大きい人間になったような錯覚。海を見ながら練習すると気力がそげるというメンバーもいましたが、各々の方法で18時の本番に合わせモチベーションを高めていきます。

昼からブラジルのバンドBad Dreamsを観るためラウンジへ。事前にfacebookでお友達になっていて前日にご挨拶。凄くジェネシスが好きなんだろうな~という感じ。歌も演奏もパーフェクト、曲の内容に合わせた切腹のパフォーマンス(あとで”武士道”の刺青を見せてくれました)シアトリカルなステージは大好評でした。

その後、我らが奥本先輩のSpock's Beardを観るためプールステージへ。ニール・モーズが在籍していたこともあり(お兄さんのアラン・モーズがギター)ニールにも通じる王道プログレ。そして正統派ロックバンドとしてのビート、パワー、パフォーマンス、どれもスケールが大きく当たり前ですが”海外のバンド(奥本さんがいるにもかかわらず)”というのを凄く感じました。何が違うんだろう?GG風の曲もあったり、とにかくカッコいいバンドです。そして4台のキーボードを立って弾く奥本さんのパフォーマンス(自前のオールドムーグが痺れる)、「Ryo!, Ryo!」と絶叫され、ひいきめでなくこのバンドNo.1のスターです。同じ日本人として誇らしく思える瞬間でした。

終わったら一緒に食事しようよ、とのお誘いで奥さんも交えて昼食。さあ、次は我々の出番です。一昨日を上回るパフォーマンスをと誓い合いました。

奥本さんのアドバイスに従い、なんとか早めの準備をと動きましたが、Centrumのスケジュールが詰まっていて結局45分前に準備開始。このフェスではしょうがないですね...でもめげずにベストを尽くします。我々が奔走していると、階段に何やら長蛇の列が上から続いている。同時刻にポートノイ、ニール・モーズ、ハケット、スティックメンという豪華メンバーのPhoto Sessionがあるみたい(昨日より随分豪華?)。ただ並んでいる人がいるということは我々のお客にも成り得るということで逆にラッキーかも!。バタバタとセッティングを終え、結局15分押しでこの日はサウンドチェックも無く演奏を開始しました。

1. Deadlock Triangle

2. Tangram Paradox           

3. 嵐が丘

4. Double Helix       

5. Castle in the Mist

6. ハニカムストラクチャー

7. スケルター

8. 迷いの森

9. 聲無キ涙

10. グノーム

11. Distance

この日のエレアスは何かが違っていた!奥本パワーが乗り移ったような自信に満ちた表情の面々。特に田辺君は「真面目そうに叩いているだけじゃ駄目やん!」と奥本さんに突っ込まれたせいか、今まででベストの演奏だったのでは(ひと皮むけた!?)。モニター環境はイマイチでしたが、とても気分よく演奏出来、お客さんが乗っているのが分かります。見上げると5Fフロアーで女性が何人か踊っている(カンサスのライブ中に注意を受けていた集団だ)変拍子でもお構いなし、エレアスって踊れるんですね(^^)。アストゥーリアスの歴史上初の珍事です。一昨日以上の拍手喝采に包まれプログラムは進行。終演後の反響もすさまじく、やり切った感がありました。中にペルーから来たというお客さんがいて、5人にとオカリナを人数分プレゼントしてくれました。嬉しいです(お返しにジャパニーズ扇子をプレゼント)。途中のMCでプール横の売店でCD・DVD・Tシャツを販売しているという話を川越さんにしてもらいましたが、なんと早々と閉店していて買えなかったというお客さんがたくさん戻ってきました。残念...amazon USAで買ってねとアナウンスすることに。いずれにせよ大好評は間違いなくめでたしめでたし、一同打ち上げに向かいます。

さてこの日2/10はギター平田聡のウン回目の誕生日。パスポート情報から気がつき、何かやろうと密かに企んでいました。ステージ上でお客さんと共有しようかという案もありましたが、ああいう性格なので(^^;)、動揺して演奏に差し障っても困るとのことで打ち上げの席での誕生会となりました。ビュッフェのデザートでデコレーションケーキ風を作り、急ごしらえのプレゼントでささやかな船上の誕生会。平田さん、みんなを癒すキャラとして、これからもよろしくお願いしますねm(_ _)m。

無事演奏も終わりフェスの日程もあとわずか。明朝の下船のため荷物をパッキングするため各自部屋に戻ります(23時までに預ける荷物は部屋の前に出しておく決まり)。

途中CentrumのP・モラーツをちょっと観戦。最近バニー・ブルネル(リターントゥーフォーエバーにも参加していた凄腕フレットレスベーシスト)と一緒に活動していると聞き、CTTEに一緒に来るかと実は凄く期待していましたが、結局モラーツさんはピアノソロでの参加ということのようです(前回は打ち込みリズム+シンセ群のソロ)。そういうことでシアターではなかったのかも。それは素晴らしいピアノソロでしたが、次回は是非バンドで観たいところです。

プールステージではデイブ・カーズナーさんのステージ。骨太なロック?プログレ色は薄いかと思いましたが、あとでYouTubeを見ると「虚空のスキャット」をカバーしたり、グレッグ・レイク・トリビュートとのことでいろいろ披露していた模様。B・シャーウッドさんが「Still You Turn Me On」を歌ったりと、もうちょっと見たかったです。

22:30から出演者が集まるパーティーがあるとのことで13階ラウンジへ移動。すっかり盛り上がっている大御所たちを尻目に、我々は英語の出来ないコンプレックスから隅っこでおとなしくしていると、奥本夫妻が気を遣ってくれていろんな人達に紹介して回ってくれました。お蔭でニールさん一派にも面通しいただいたり、最後の夜も楽しく過ごすことが出来ました。最後までご面倒かけます(^^;)。タイスさん&モラーツさん、夢の酔っ払いピアノ競演など(もちろん奥本さんも乱入、川越氏は固く辞退...)も見られて幸せです。窓越しにプールステージを見ると、ポートノイバンドが演奏中(今日は一段とメタル色が強い、これCTTEなの?)最後はT・レヴィンが加わり大盛り上がりで終了。同時刻にシアターでカーブドエアーが演奏という凄いスケジューリングの中、4日間のフェスは終焉を迎えることになりました。結局、Fringe、Pain of Salvationは全く見ることが出来ず、またしても出演者が多過ぎるがゆえの弊害を味わうこととなりました。

その後、名残惜しい我々は11Fのビュッフェで二次会へ。閉店で追い出されるまで居残り(困った日本人です)4日間の思い出に花を咲かせました。


さて現代のプログレ界というものがあるとして、今回参加のM・ポートノイとN・モーズの動向はかなり重要と思われます。実は私、ドリームシアターより前の世代のプログレファンなもので、近年彼らの偉業をあとから勉強して知ったという次第でにわか者です(^^;)。なので的外れな物言いになるかもしれないですが、彼ら一派の音楽に初めて生で触れ、2000年代以降のプログレムーブメントというものを強く感じさせられた旅となりました。

M・ポートノイは2014年のProgressive Nation At The Seaという別のクルーズフェスの主役だった訳ですが(そのフェスは現在休止)今回からCTTEに参加。CTTEのカラーを大きく変える存在となりました。

Spock's Beardを含めた関連数バンドや、HAKEN、frostといった新しい?勢力の音は自分が10代の頃から愛聴していたプログレとは何かが違っていました。決して否定している訳ではなく、物凄くテクニカルで音楽的にも高度、プログレッシブ(進歩的な)ロックのひとつの到達点と言えるサウンドで、とても自分には真似出来ないぐらい進んでしまったという感があります。

3年前のCTTEに参加したとき、ビッグネームだらけのラインナップに浮かれながらも、演奏も全盛期とは比べ物にならず、懐古的な印象を拭えませんでした。3年のあいだに、C・スクワイア、J・ウェットン、エマーソン&レイク、E・フローゼも亡くなり、確実にプログレ界に世代交代の波が押し寄せています。必然的にCTTEも現役感のある(懐メロではなく)確実に客を呼べる人材を必要としているのでしょう。多少メタル寄りでもお客さんの熱狂を見ればこれが正しい道であることが分かります。反面、オールドファンが何を求めているのか本音を聞いてみたい気持ちもありまして、こういったことがドリームシアター以前と以後、対決の図式というものなのかもしれません。これだけ歴史を覆してしまう、そして衰退していたプログレ界を復活させてしまったのですから、偉大なバンドであることは間違いありません。

さて我々エレアスです。リーダーでありバンドのコンセプトを作った(8年間の活動で5人による音楽に変化してきていますが)私がオールド派の人間なので、そちらに属するプログレなのだと思います。今回の出演者はもちろん、世界中でもあまり比類のないタイプのバンドになりつつあると自負していますが、それが新世代のプログレファンに受け入れられるかについては、ちょっと自信が揺らいでいます。今回も一部の人はエレアスの独自性を理解してもらえたようで「No.1!」「こんな音楽聴いたことがない」と多くのお褒めの言葉を頂戴しました。日本でもそうなのですが、本当に理解してくれるのは、音楽にかなり精通したリスナーの方達、メタルに頭を振っているような大多数のロックファンには中々理解されないのが実情です。新世代にも受け入れられるような要素を取り入れていくのか、新たな課題を胸に今後の活動を進めていかなければと思っています(まあ、人間そんなに急には変われないので、大筋は変わらないとは思いますが...)。

ということで、いろんな意味で刺激を受けたCTTE2017、本当にどうもありがとう!スタッフの皆さん&船の乗組員の皆さん、本当にありがとうございました、そしてお疲れ様でしたm(_ _)m。

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